本ベージはランダウ・リフシッツ理論物理学教程のVolume8:連続媒質中の電気力学の要約である。(現在進行形で更新中)

8-1: 導体の静電気学
1.導体の静電場(The electrostatic field of conductors)
Maxwell方程式を分子スケールサイズに対して平均化することで得られるマクロな電磁気学を扱う。物体には導体と誘電体が存在する。この節では導体の静電気学を扱う。導体の特徴は内部に電流と電場が存在しないことであり、これから電荷は物体の表面にしか分布できないことが示される。Maxwell方程式を平均化するとラプラス方程式が導出され,電場の接線成分が0という境界条件から、物体の表面は等ポテンシャル面になることが判る。静電場では場の境界でしかポテンシャルは極値を取れないという定理(Earnshawの定理)を示す。

2.導体の静電場でのエネルギー(The energy of the electrostatic field of conductors)
導体の存在化における静電エネルギーを計算する。電位係数と誘導係数を導入する。エネルギーを変分させてこの係数が対称行列であることを示し、エネルギーが正確定であることから対称要素が正であることを示す。また非対称要素が負であることがEarnshawの定理から判る。次に電荷はエネルギーを最小にするように空間的に分布しなくてはならないというThomsonの定理を導く。この定理から電荷を持たない導体を静電場に持ち込むと必ずエネルギーが小さくなること、つまり電荷を持たない導体は静電場に対して引力が働くことがわかる。またEarnshawの定理を合わせると、静電場の導体は電気力だけで釣り合いを保てないことが判る。最後に一様電場中にある導体のエネルギーを評価し、双極子モーメントと電場の内積でかけることを示す。
問題にはリングの静電容量を求める問題(普通の方法では発散して計算できない)などがある。

3.静電場の問題の解法(Methods of solving problems in electrostatics)
静電場の問題を解く際に用いられる物理数学の方法を説明する。具体的には鏡像法、反転法、解析写像の方法である。そしてそれにちなんだ問題がたくさんある。

4.楕円体の導体(A conducting ellipsoid)
楕円体座標を使ってラプラス方程式を解く。問題には見た目では解けそうにない問題が解かれていて面白い。

5.導体に働く力(The forces on a conductor)
Maxwell応力テンソルを使って導体に働く力Fを調べる。Fやトルクの計算に対しては全エネルギーを微分するほうが便利である。電荷一定、ポテンシャル一定条件での表式を調べる。力やトルクが0のときの導体の変形量を調べる。問題には球を2つの半球に分割したときに生じる斥力の大きさ、水銀での重力波、電荷を帯びた液滴の落下問題がある。難しい。

8-2: 誘電体の静電気学
6.誘電体中の静電場(The electric field in dielectrics)
誘電体の存在を述べ、その静電的性質を議論する。誘電体内に外部電場がないとき、分極率Pによって電荷分布が議論でき、それは双極子モーメントと関係することを述べる。電束密度Dを導入する。異なる2つの誘電体表面でのEとDの境界条件を示す。

7.誘電率(The permittivity)
電束密度Dと電場Eの間に比例関係が存在すると仮定し、その比例係数として誘電率を導入する。このとき、静電場はポテンシャルに対するラプラス方程式を解けば決めることができる。導体は誘電率が無限大の物質だと形式的に見なせる。Problem5は、点A、Bの位置でのポテンシャルに対して相反定理である。

8.楕円体の誘電体(A dielectric ellipsoid)
一様電場中の楕円体の性質を調べる。まず球、シリンダーが一様外部電場中にあるときの電場E、電束密度の表式を求める。一般の楕円体の場合はsection4の結果が使える。ただし、楕円体の場合も、楕円体内部の電場分布は簡単に評価することが可能である。

9.混合物の誘電率(The permittivity of a mixture)
2種の誘電体の混合物に対する実効的な誘電率を評価する。2種の誘電体の誘電率が小さい場合、媒質中に球状粒子が分散している場合、の2つに対して評価する。

10.電場中の誘電体の熱力学的関係式(Thermodynamic relations for dielectrics in an electric field)
電場下に誘電体があるときの熱力学関係式を議論する。導体のみが存在する場合は、導体内に電場が存在しないことから単に全エネルギーが増加するだけで熱力学的関係式には変化がない。電荷を帯びた外部導体に由来する静電場中に誘電体が存在すると仮定し、誘電体の静電エネルギー変化を外部導体の電荷を変分した際のエネルギー変化と関係づけて評価する。これから、自由エネルギー等に成立する熱力学的関係式をルジャンドル変換等も含めて導出する。DとEの間に線形関係が成立するときに、具体的な表式を求める。

11.誘電体の全自由エネルギー(The total free energy of a dielectric)
誘電体に対して、外部電場由来のエネルギーを差し引いた実効的な自由エネルギーを議論する。特に自由エネルギーを外部電場で変分すると分極率求まることを示す。DとEの間に線形関係があるときに具体的な表式を調べる。

12.等方性誘電体の電気歪み(Electrostriction of isotropic dielectrics)
外部電場中で誘電体内部には力が発生し変形が起こる。これを電気歪みと呼ぶ。誘電体の体積変形のみを考慮すればよい場合に、等温過程での電場中での誘電体の体積変化と吸熱量の表式を求める。

13.結晶の誘電的性質(Dielectric properties of crystals)
結晶中では、誘電率はその対称性を持つテンソルとして導入される。また、外場Eが0でも有限の電束密度を持つ物性が存在し、それは焦電性(pyroelectric)と呼ばれる。それら性質を持つ場合の自由エネルギーや対称性を調べる。焦電効果を示す結晶は内部分極を持つが、内部電場によって誘起される電流により物質表面に正負の電荷が生じて(もしくは空気中のイオンが表面吸着し)、その分極が打ち消されるため物質としての分極は観察されない。物質の温度を変えて表面の電荷バランスを変えたときに自発的分極が観察される。

14.電気感受率の符号(The sign of the dielectric susceptibility)
誘電率を仮想的に変分したときの自由エネルギー変化を評価し、特に電荷を帯びていない導体を誘電体中に持ち込むと自由エネルギーが減少することが分かる。また、誘電体中に電荷を落ち込んでもエネルギーは減少する。誘電体中に電荷を持ち込むとエネルギーが減少することは、統計物理学の摂動公式を用いても示せる。これらから、誘電率は1より大きく、感受率は正である必要が示される。

15.流体中の電気力(Electric forces in a fluid dielectric)
流体中の電気的な応力を議論する。自由エネルギーを変分することで応力テンソルが導出される。気液境界面を持つ液体中の圧力変化、誘電体の体積力の表式を求める。気体に対しては、密度が小さいという条件から体積力の公式は簡易化される。力の釣り合いは、一般化された化学ポテンシャルの平衡条件に帰着する。最後に誘電体の変形を直接考慮することで自由エネルギーの変分公式から体積力の公式が導出できることを示す。

16.固体内の電気力(Electric forces in solids)
同様に固体中の応力テンソルを議論する。誘電率が変形依存性(歪みテンソルの関数で書ける)を持つことに注意して、導出する。非等方的な固体に対する表式を導出する。物体に働く力とトルクの表式を求める。力とトルクは外部電場と分極率を用いればシンプルな表式となる。

17.圧電効果(Piezoelectrics)
物質中の電束密度が応力に対して線形応答する物質が存在し、それを圧電体と呼ぶ。その表現のために3階の圧電テンソルを導入し、自由エネルギーを書き下す。これから歪みテンソルが電場Eに対して線形応答する成分を持つことが示される。外場存在下での変形を決めるためには、静電方程式と弾性方程式を同時に解くという難しい処理が必要である。圧電テンソルの対称性を議論する。また、液晶に対しても同種の問題が考慮可能で、電束密度の配向ベクトル依存性を書き下す。problemでは結晶対称性と圧電テンソルの成分の関係や圧電体での音速を調べる。

18.熱力学的不等式(Thermodynamic inequalities)
自由エネルギーの変分原理から、div D=0、及びDと導体表面の電荷に関する表式を使うと、rotE=0と導体表面が等ポテンシャル面になることが示せることを述べる。逆もまた示せる。電束密度Dが存在する条件下で、自由エネルギーをdelta Dに対して摂動展開し、熱力学的不等式を求める。特に、電場Eと電束密度Dのベクトルのなす角が90度未満であること、EをDで変分した量が正であることの必要性が導かれる。

19.強誘電体(Ferroelectrics)
焦電性と異なり、結晶の対称性の破れの結果により分極ベクトルが自発的に生じる場合があり、そのような物質を強誘電体と呼ぶ。分極ベクトルの方向は相転移に伴う結晶対称性の変化によって決まる。分極ベクトルを導入し自由エネルギーを書き下すし、ランダウ理論を展開する(SP1の議論と同様)。電場と分極率のカップリングの存在により、分極率は第1種の相転移を示す。立方晶系に対する自由エネルギーを議論し、等方系で現れない項の存在により分極率の振る舞いが変わる事が分かる。最後に分極率と弾性応力のカップリングが存在する場合の振る舞いを調べ、せん断弾性率が変化し、特に相転移点で非常に増大することを述べる。

20.間接型強誘電体(Improper ferroelectrics)
前節での議論は分極ベクトルが相転移の秩序変数であると仮定したが、対称性の破れが2階のテンソル量を秩序変数として起こり、その影響で間接的に分極が生じるということがあり得る。そのような強誘電体を関節型強誘電体と呼ぶ。その場合の秩序変数と分極ベクトルの間の関係を結晶群の観点から議論する。具体的に、熱力学ポテンシャルを例示し、分極ベクトルに対して前節のランダウ理論と異なる臨界的な振る舞いを示すことを述べる。

8-3: 定常電流(steady current)
21.電流密度と伝導度(The current density and the conductivity)
定常電流場を考える。オームの法則を導入し、導体間の電流と電場の境界条件を示す。ジュール熱やエントロピーの関係を示す。また非等方な媒質では伝導度はテンソルであるが、相反定理から(磁場がないとき)対称テンソルになることを示す。Problemには導体球の北極から南極に電流が流れている場合のポテンシャルを決める問題がある。

22.ホール効果(The Hall effect)
伝導度テンソルが磁場依存性を持つ場合の相反関係を説明する。これから、伝導度テンソルの磁場に対する表式を書きくだし、磁場に対する2次までの表式を書き下す。特に磁場があるとき、電場に対して直交する方向に電流が生じ(その逆も)、それをホール効果と呼ぶ。

23.接触電位差(The contact potential)
導体表面から電荷を取り除くときに必要なエネルギーとして仕事関数を導入する。仕事関数は正である。仕事関数は導体種だけでなく、表面のコンタミや結晶面の関数となる。導体表面の電荷分布とポテンシャルの関係を議論することで、仕事関数を導体表面の電気二重層と関係付けることができる。2つの導体が接触しているとき、仕事関数の差異から表面間で電荷の移動が起こり、その電荷移動がなくなるような導体間のポテンシャル差異を接触電位差と呼ぶ。導体接触面でのポテンシャルや電場分布を簡単に表す。幾つもの導体が回路になっているときに両端の接触電位差は簡単に計算できるが、両端の物質が同一のとき、熱力学第2法則からも要求されるようにその接触電位差は0である。

24.ガルバーニ電池(The galvanic cell)
前節の結論は、回路に2つ以上の異なるキャリア(電荷とイオンなど)が流れるときには成立しない。この場合のポテンシャル差異を起電力と呼び、ガルバニ電池に対して議論する。起電力は回路中の電流と抵抗に対してキルヒホッフの法則の関係式がある。起電力は電池内の金属状態の化学ポテンシャルから表すことができる。回路を流れる電流による発生熱量は起電力で簡単に表せる。

25.電気毛管現象(Electrocapillarity)
2つの導電性の流体間の表面張力は界面の電荷に対して依存性を持ち、それを電気毛管現象と呼ぶ。電荷と表面張力の間の関係式を議論する。特に、熱力学第2法則から表面張力は電荷=0のときに極大値を取る。

26.熱電効果(Thermoelectric phenomena)
金属中の熱力学的平衡条件は、温度が一様であることと、電流が流れないことであり、後者は電子の化学ポテンシャル(金属の寄与と外部電場の寄与を足した量)が一定である事である。電場Eは電流がなくても、温度勾配があれば一般に0ではなく、またエネルギーフラックスも温度勾配だけでなく、電場の関数である。つまり熱と電気的な性質には交互作用がある。これらの表式を整理し、相反関係や第2法則を議論する。興味深いのは、第2法則の制約からと電流や温度勾配が圧力勾配とカップルしないことである。発生する熱量、トムソン効果(温度勾配がある導体に電流を流すと吸発熱すること)、ペルチェ効果(異種の金属接合部に電流を流すと吸発熱すること)を議論する。また、回路に2つ以上の金属接合部があり、その接合部の温度が異なる場合熱起電力が発生する事を示す。

27.熱電磁気効果(Thermogalvanomagnetic phenomena)
前節の結果に磁場依存性を付け加え、各輸送係数が持つ対称性を相反関係から導く。磁場に起因する熱起電力項をNernst効果、熱ホール効果(Leduc-Righi効果)、ペルチェ効果の磁場版(Ettingshausen効果)の存在を述べる。

28.拡散現象(Diffusion phenomena)
温度一定下での電解質溶液中の拡散現象を議論する。電流は電解質の移動によって発生することを踏まえて、電流密度の電場と拡散項(化学ポテンシャルのgrad)依存性を書き下す。また、電解質の輸送に対する、拡散と電流に対する依存性を相反関係を踏まえて書き下す。Problemには、正負極がA、電解質がAXで構成される電池に対する電流密度を計算する。

8-4: 静磁場(static magnetic field)
29. 静磁場(Static magnetic field)
静磁場でのマクロな磁場が満たすべき方程式をミクロなMaxwell方程式から導く。ミクロなhの平均をBとする(E-B対応)事が明示されているのが興味深い。磁化Mを導入し、BとHの関係を述べ、透磁率や磁気感受率を導入する。磁化は(非強磁性体の場合)相対論的効果に由来するため、物質間での差異が小さい。BとHの境界条件、及び境界面に表面電流が流れているときの境界条件を導く。

30. 定常電流による磁場(The magnetic field of a steady current)
定常電流が存在するときの磁場の法則を議論する。ベクトルポテンシャルを導入し(クーロンゲージ)、電流との間にポアソン方程式が成立する事を示す。これからBiot-Savartの法則を導く。ベクトルポテンシャルは、遠距離では磁化ベクトルで表せること、閉電流の循環が磁化になること、導体中でのエネルギーフラックス(Poyntingベクトルに対応するもの)を導入する。Problemで静磁場の問題を解く。

31. 磁場中の熱力学的関係式(Thermodynamic relations in a magnetic field)
静磁場が存在するとき、電流が流れるため、静磁場がなす仕事は、単位時間あたりのジュール熱と関係づけられる。これから、磁場中の自由エネルギーの表式が得られる。結果の式は静電場の式と形式的に同等である。この表式は(HとBでなく)電流とベクトルポテンシャルで書き表すこともできる。またsection18と同等の議論より透磁率が正である事が示せるが、これは一般にmu<1になり得る透磁率に対しては、重要な制約である。

32. 磁性体の全自由エネルギー(The total free energy of a magnetic substance)
誘電体のときと同様に、自由エネルギーから外部磁場による影響を差し引いた場合を考え、磁性体の自由エネルギーを議論する。結果、磁化を用いた表式で書けることが示される。透磁率がmu<1をとり得る理由は、電場とは異なり、Hamiltonianに磁場の寄与が非線形に入り、section14の摂動論を用いた議論が適用できないことから理解できる。実際、磁場中で常磁性体はHが大きい方向に動くが、反磁性体は逆向きに動く。

33. 電流系のエネルギー(The energy of a system of currents)
いくつかの導体に電流が流れている場合の全磁気エネルギーを評価する。ただし、導体と媒質は強磁性体ではないと仮定する。自己・相互インダクタンス係数が導入される。相互インダクタンスに対する表式を書き下す。磁気エネルギーは電流と磁束の積で書ける。電流系に加わる力などはよくある線形的な表式を持つ。

34. 直線状導体の自己インダクタンス(The self-inductance of linear conductors)
直線状導体の自己インダクタンスを考える。ワイヤ断面での電流密度分布が一様と仮定し、自己インダクタンスを計算する。またソレノイドに対する自己インダクタンスを評価する。Problemでは様々な系での自己インダクタンスの値を実際に求める。

35. 磁場中の力(Forces in a magnetic field)
磁場による応力テンソルを評価するために電場とのアナロジーを考える。電場の応力テンソルの導出時にはrot E=0を用いたが、電流が存在すると磁場は一般にrot H \ne=0である。しかし、電流の存在は応力テンソルに対する高次の修正となるため、電流を0とおいて良い。これから応力テンソルと、体積力を求める。これから、導体に加わるローレンツ力の表式が導かれる。ローレンツ力は導体に対して仕事をするわけではない(section 63参照)。線状導体に対する力やトルクの表式を導く。

36. 磁気回転効果(Gyromagnetic phenomena)
物質を回転させるとその回転軸方向に磁化が生じ(Barnett効果)、逆に強磁性体はその軸方向に回転が生じる(Einstein-de Haas効果)。これは磁気モーメントと角速度の間にカップリングが存在するためで、その係数が磁気回転係数である。

8-5: 強磁性と反強磁性(ferromagnetism and antiferromagnetism)
37. 結晶の磁気対称性(Magnetic symmetry of crystals)
38. (Magnetic classes and space groups)
39. キュリー点近くの強磁性体(Ferromagnets near the Curie point)
40. 磁気異方エネルギー(The magnetic anisotropy energy)
41. (The magnetization curve of ferromagnets)
42. (Magnetostriction of ferromagnets)
43. (Surface tension of a domain wall)
44. (The domain structure of ferromagnets)
45. (Single-domain particles)
46. (Orientational transitions)
47. (Fluctuations in ferromagnets)
48. (Antiferromagnets near the Curie point)
49. (The bicritical point for an antiferromagnet)
50. (Weak ferromagnetism)
51. (Piezomagnetism and the magnetoelectric effect)
52. (Helicoidal magnetic structures)

8-6: 超伝導(superconductivity)
53. 超伝導体の磁気的性質(The magnetic properties of superconductors)
超伝導体の特徴は内部でB=0となることである。もちろん超伝導体表面で磁場の侵入が存在するが、本節ではその影響を無視する。これから、表面で磁場の法線成分が0になり、表面の垂直方向に磁場の圧縮力が作用することがわかる。また、体積電流が0になり、表面電流を持つことが示される。通常の物質では断面積分した表面電流は0になるが、超伝導体では0になる必要がなく、多重連結体では実際に永久電流が存在できる。

54. 超伝導電流(The superconductivity current)
単連結の超伝導体に対して、外場が存在しない場合に定常電流が存在しないことを示す。また、外場が存在するときに生じた電流による超伝導体が持つ磁化を計算する。また、多重連結体(本文ではリング)に対しては外場がなくても定常電流が存在できる。このときに系を貫く磁束を求める。超伝導リングを貫く磁束は時間変化しないという制約から、外部磁束を変えたり、リングの形状を変えると、定常電流が変化することがわかる。

55. 臨界磁場(The critical field)
超伝導体に加える磁場が臨界磁場を上回ると常伝導体に転移する。超伝導体と常伝導体が満たすべき熱力学的性質(自由エネルギー・エントロピ・転移熱・比熱・クラペイロンクラウジウス関係など)を議論する。超伝導・超伝導体の境界では磁場が臨界磁場に等しくなる必要がある。また、超・常伝導体の境界が動く場合の境界条件を相対論的議論から導く。

56. 中間状態(The intermediate state)
超伝導体中の磁場Hは外部磁場よりも大きい。そのため、外部磁場が臨界磁場以下で常伝導転移を起こす。常伝導転移は、直感的には超伝導体の一部の領域が常電導体に転移すると思われるが、そのような転移は、常伝導転移領域が凸状の場合は常電導体中の磁場が境界よりも低下し、また凹状の場合は磁場の発散が起こる、という問題から実現されない。実際には、超伝導・常伝導領域が層状に形成されるように転移が起こり、その状態を中間状態と呼ぶ。中間状態の平均磁束密度と平均磁場を熱力学的議論から評価する。また、中間領域の自由エネルギーを計算する。本節では表面エネルギーの影響を考慮していないので、中間状態に転移する磁場の大きさは本節での計算値よりも大きくなることに注意。最後に、第2種の超伝導体の場合の自由エネルギーを簡単に調べる。

57. 中間状態の構造(Structure of the intermediate state)
中間状態の構造を、外部媒体との境界で磁場が持つべき境界条件から議論する。単純な層構造ではなく、境界近傍で形状が歪むことがわかる(本文Fig.35参照)。また、自由エネルギーを評価し、中間状態における超伝導・常電導体の層構造厚さの磁場依存性を評価する。

8-7: 準定常電磁場(quasi-static electromagnetic field)
58. 準静的な場の方程式(Equations of the quasi-static field)
外場がゆっくり変動する場合の場の方程式を調べる。ここで、ゆっくりという条件は外場の変動波長が系のサイズ、及び電子の平均自由行程よりも十分大きいことを意味する。この条件下で変動磁場が存在するときの場の方程式を調べると、磁場は拡散方程式に従うことがわかる。このとき、導体表面及び異種導体表面での磁場の境界条件を示す。また、拡散方程式から磁場変動に対する緩和時間を見積もる。

59.導体への磁場の侵入長 (Depth of penetration of a magnetic field into a conductor)
変動磁場中の導体表面には渦電流が生じる。渦電流の侵入長は拡散方程式から見積もれる。侵入長が系のサイズよりも十分大きい時は、拡散方程式の時間項を無視でき、つまり磁場はラプラス方程式に従い、誘導電流は周波数の1次に比例する微小量になる。一方、侵入長が系のサイズより十分小さいときは、導体中に磁場が侵入せず、導体外部の磁場分布は超伝導体のときの問題と同等になる。表面近傍での磁場及び電場の分布を計算し、これから表面インピーダンスを書き下す。渦電流による発熱量は、低周波数極限では\omega^2、高周波数極限では\sqrt(\omega)に比例する。磁場によって誘導された導体の磁気モーメントに対する分極テンソルを導入する。分極テンソルの虚部は低周波数極限で\omega、高周波数極限で1/\sqrt(\omega)に比例するため、その間で極大を取る。Problemでは変動外場中での分極テンソルを計算する。

60. 表皮効果(The skin effect)
断面が円状の線状導体中に変動電流が存在するときの電場及び磁場の導体内の分布を具体的に計算する。特に、高周波数極限では導体表面に局在し、それを表皮効果と呼ぶ。

61. 複素抵抗(The complex resistance)
正弦的な起電力を線状導体に加えたときの電流に対する回路抵抗と自己インダクタンスの依存性を評価する。複素抵抗(インピーダンス)の実部が発熱量に関係することを述べる。section60の結果を用いて、線状導体に対するインピーダンスの実部・虚部の電流依存性を具体的に書き下す。逆に線状回路を貫く外部磁場が存在する場合に、誘導電流の抵抗及び自己インダクタンス依存性を求める。複数の回路が存在する場合はインピーダンス行列として書き表される。

62. 準定常電流におけるキャパシタンス(Capacitance in a quasi-steady current circuit)


63. 磁場中の導体の運動(Motion of a conductor in a magnetic field)


64. 加速による電流励起(Excitation of currents by acceleration)


8-8: 磁気流体力学(magnetohydrodynamics)
65. 磁場中の流体に対する運動方程式(The equations of motion for a fluid in a magnetic field)


66. 磁気流体に対する散逸過程(Dissipative processes in magnetohydrodynamics)


67. 平行板間の磁気流体の流れ(Magnetohydrodynamic flow between parallel planes)


68. (Equilibrium configurations)


69. (Hydromagnetic waves)


70. (Conditions at discontinuities)


71. (Tangential and rotational discontinuities)


72. (Shock waves)


73. (Evolutionary shock waves)


74. 乱流ダイナモ(The turbulent dynamo)


8-9: 電磁波の方程式 (the electromagnetic wave equations)
75. (The field equations in a dielectric in the absence of dispersion)
76. (The electrodynamics of moving dielectrics)
77. (The dispersion of the permittivity)
78. (The permittivity at very high frequencies)
79. (The dispersion of the magnetic permeability)
80. (The field energy in dispersive media)
81. (The stress tensor in dispersive media)
82. (The analytical properties of e(w))
83. (A plane monochromatic wave)
84. (Transparent media)

8-10: 電磁波の伝搬(the propagation of electromagnetic waves)
85. (Geometrical optics)
86. (Reflection and refraction of electromagnetic waves)
87. (The surface impedance of metals)
88. (The propagation of waves in an inhomogeneous medium)
89. (The reciprocity principle)
90. (Electromagnetic oscillations in hollow resonators)
91. (The propagation of electromagnetic waves in waveguides)
92. (The scattering of electromagnetic waves by small particles)
93. (The absorption of electromagnetic waves by small particles)
94. (Diffraction by a wedge)
95. (Diffraction by a plane screen)

8-11: 異方性媒質中の電磁波(electromagnetic waves in anisotropic media)
96. (The permittivity of crystals)
97. (A plane wave in an anisotropic medium)
98. (Optical properties of uniaxial crystals)
99. (Biaxial crystals)
100. (Double refraction in an electric field)
101. (Magnetic-optical effects)
102. (Mechanical-optical effects)

8-12: (spatial dispersion)
103. (Spatial dispersion)
104. (Natural optical activity)
105. (Spatial dispersion in optically inactive media)
106. (Spatial dispersion near an absorption line)

8-13: 非線形光学(non-linear optics)
107. (Frequency transformation in non-linear media)
108. (The non-linear permittivity)
109. (Self-focusing)
110. (Second-harmonic generation)
111. (Strong electromagnetic waves)
112. (Stimulated Raman scattering)

8-13: 物質を通過する高速粒子(the passage of fast particles through matter)
113. (Ionization losses by fast particles in matter: the non-relativistic case)
114. (Ionization losses by fast particles in matter: the relativistic case)
115. (Cherenkov radiation)
116. (Transition radiation)

8-14: 電磁波の散乱(scattering of electromagnetic waves)
117. 等方媒質中の散乱の一般論(The general theory of scattering in isotropic media)
118. 散乱によって印加される詳細釣り合いの定理(The principle of detailed balancing applied to scattering)
119. 振動数変化の小さい散乱(Scattering with small change of frequency)
120. 気体および液体中のレイリー散乱(Rayleigh scattering in gases and liquids)
121. (Critical opalescence)
122. 液晶による散乱(Scattering in liquid crystals)
123. アモルファス固体による散乱(Scattering in amorphous solids)

8-15: 結晶中のX線回折(diffraction of x-rays in crystals)
124. X線回折の一般論(The general theory of X-ray diffraction)
125. 積分強度(The integral intensity)
126. (Diffuse thermal scattering of X-rays)
127. (The temperature dependence of the diffraction cross-section)